帰り道

駅から家までの桜並木。暗い中、前方でサラリーマン風のおじさんが道路にかがんでいた。何をしてるのかと訝しみながら近づくと、おじさんは路上で死を迎えつつある蝉を手の平に一旦置いて、桜の幹にそっとのっけた。人に踏み潰されないようにという気持ちからだろう。その動作がとてもゆっくりしていて、蝉を、夏を惜しんでいるようだった。