グリング「カリフォルニア」

NHK BS2で以前放送されたグリングの「カリフォルニア」というお芝居を観た(録画)。これまで観た青木さんの作品は「獏のゆりかご」のみ。世の皆様のレビューを読んでいると、どうやら「獏のゆりかご」はいつもよりも青木色が薄いらしい。確かに、一般受けしそうな「獏のゆりかご」よりも、「カリフォルニア」の方が好きな人と嫌いな人が真っ二つに分かれそうなお芝居だった。
全てが淡々と流れていく。自然なんだけど、決してアドリブではない、リアルな台詞。人間の会話にたくさんある無駄な部分がそのまま台詞になっている。その自然さがデフォルメされていて不自然になっている登場人物もいるけれど、演技していることを忘れてしまいそうなほどさらりと台詞を発する登場人物の多いこと。その会話から過去に起こったことを読み解き、ストーリーを追っていくのがとてもおもしろい。おもしろいと言っても、笑えるおもしろさでもなく、知的なおもしろさでもないように感じる。的確な言葉が出てこないのだけど、人間のいやらしい感情が反応するおもしろさとでも言えばいいのだろうか。他人の生活を覗き見ているような、そういう好奇心が刺激される気がする。でもそれが全てではなくて、人間の切なさや哀しさ、現代の様々な問題を扱っているから物語に深みがあるのだと思う。