入院5日目から入院7日目までの記録

8月3日
4時半起床。寝すぎなのか、ドレーンのせいなのか、背中が痛いので、起きることにする。個室だから、起床時間は私が決める。文句あるか。
4時半に看護師さんが巡回に来たから、しばらくは来ない。だから、この間にパジャマと下着を着替える。昼間に着替えても良いのだが、「検温しますー」とか「レントゲン撮りに行ってくださいね」とか「お掃除ですよー」などと、案外人が入ってくるものだから、いかなる時もゆっくり着替えることができないのだ。
起き立ての身体は痛くて、ぎこちない動きでパジャマとタンクトップを脱ぐ。パジャマはレントゲン撮影で便利なように前開きのものにしてあるから、まだ脱ぎ着しやすいものの、タンクトップは毎回苦労する。
タンクトップを脱いだところで、異変に気がつく。タンクトップの左脇部分、ドレーンが入っているあたりに大きな血液のしみが。ドレーンの穴がおかしくなったのかと焦り、ナースコール。でも、裸の状態でいるのもイヤだし、もしかしたらまだ血が漏れ出しているかもしれないのに新しいタンクトップを着て汚すのもイヤなので、血のしみがついたタンクトップを再び苦労しながら急いで着て待ってみる。
看護師さんに見てもらうと、チューブの接続部分が少し緩んでいたとかで、応急処置的にガーゼをあてられる。大事にはならなくてよかったが、接続部分ってそんなに簡単に緩んでしまうのか。少し不安。でも、これ以上訴えられない小心者な自分。まあ、今日のレントゲンで結果が良ければ、抜いてしまうものだから、どうでもいいかと前向きに考える。
しかし、実は、昨夜から少し左肩が重苦しい感じがあったり、心臓がバクバクしたりしていて、なんとなく息苦しさも感じられる。気のせいだとよいのだが。
そして午後、とうとうレントゲン撮影。なぜか、これまでは車椅子で連れて行ってくれたのに、今日は「車椅子で行きましょう」の一言が無い。ということは、歩いていけということだ。わがままを言えない患者なので、治っていることを信じて、途中のベンチで休み休み、頑張って歩いていく。これがまた遠いんだ。
そしてレントゲン検査の結果が出た。いやな予感的中。肺は再び縮んでいた。一時は退院の話まで出ていたのに、凹む。
ドレーンのクランプを解除。再びチェスト・ドレーン・バッグの青い水も上下に動き出す。肺から空気が漏れている証拠だ。それなのに、また夜になると、青い水は静止する。私の肺は一体どうなっているのだ。でももう期待しない。
この日はお友だちが15時頃、お見舞いに来てくれた。家族以外で来てくれた人第一号。とてもうれしい。そして、久しぶりの再会が病院で申し訳なく思う。いろいろ話をしたのに、後から考えると、「におい」に関する話ばかりしていたような気がする。ガールズトークの話題が「におい」って。しかも正確には「匂い」じゃなくて「臭い」の話って。どうなのよ。
この日の夜、病室を個室レベルBから個室レベルCに変えてもらう。レベルダウン。でも、どうせシャワーは浴びられないし、トイレさえあれば私は満足。12600円と9450円の違いも大きい。レベルダウンにも関わらず、トイレはレベルアップ。段差がないし、広いし、自動的に電気はON・OFFするしで、身体があまり自由に動かせない私にとってはとても助かる。


8月4日
昨晩からドレーンがつながっているチェスト・ドレーン・バッグが止まりだし、今朝は完全に静止。治るなら治る。治らないなら治らない。男ならはっきりしろ!
今朝も4時半に起きて、パジャマと下着着替える。ドレーンの痛みに慣れてきて、前よりスルっと脱げて、サッと着られる。これだけのことがうれしい。
関係ないけど、入院してから書いてきた日記を読み返してみたら、「パジャマ」を何度も「パジャパ」と書き間違えている。数回どころではなく、10回くらい。頭が回っていないのか。
ドレーンの痛みは、傷跡部分というより、身体の中が痛いということがだんだんわかってきた。中に入っているチューブの角度などが問題みたいだ。だから、痛いときに、いったんベッドに横になって起き上がると、痛みが消えていることが多い。
肺が膨らむのを助けるために、ドレーン・チェスト・バッグに加え、低圧持続吸引器サーボドレイン2000なるものが接続された。この吸引器で圧をかけて、肺から漏れた空気や胸水を吸引するんだそう。圧をかけたせいで、チェスト・ドレーン・バッグの黄色い水が常にブクブク音をたてている。激しい水のせせらぎ音。女性トイレについている音姫の激しいバージョンの音。うるさいし、ますます移動が大変に....。

16時半頃、会社の先輩2人がお見舞いに来てくれた。都心からはるばる申し訳ない。
仕事のことは気にしないでと言われたが、引継ぎのことを考えると気が気ではない。
2人が居る間に、先生が来て、手術を受ける決心を半分固める。夜、7時頃来た両親にも手術のことを話し、決心を完全に固める。
このまま肺の穴がふさがるのを待っていても、いつになるかわからないので、退院の目処が全く立たないというのが一番の理由。手術なら、術後3、4日で退院可能とのこと。再発率も低くなる。ドレーンを使用しての自然治癒で退院したのに、すぐに再発して病院に戻ってきてしまった患者の話しを聞いたことも、手術を決めた理由のひとつ。手術は来週の火曜か水曜になりそう。結構混みあっているらしい。


8月5日
今日は、左胸にチクチクピクピクとした神経にひびく痛みがよく走る日。息を止めて動く。横になればなんともないのに、起きたり、歩いたりすると痛む。朝食前に顔も洗えず、自分にがっかりする。痛いのを我慢してでも動く決心がなかなかつかない。
そんな中、先生が部屋へ来て、手術日が8月11日(水)になったとの説明を受ける。
午後15時頃、妹がやってくる。駅からタクシーで来たらしい。自分の通院で有休を取ったので、ついでにお見舞いに来てくれたのだそう。ここまで来るのは面倒だったろうに、姉想いな妹だ。今朝、「何か持ってきて欲しいものは?」との質問に、「ビオレの鼻パック1枚」とお願いしておいたのを、忘れず持ってきてくれた。お風呂に入れないから、毛穴が湯気で開くことも無く、ちゃんと洗顔しているのに、鼻が苺のようになっている。あなはずかしや。このパックで少しは解消されるとよいのだが。
妹とはひたすらおしゃべり。妹の彼氏は185cmで67?らしい。割と痩せ型だが、気胸になったことはないとのこと。ちぇっ。気胸仲間じゃないのなら、お姉ちゃんは2人の交際は認めません!(嘘)
妹が帰っていった後、お見舞い友だち第一号さんからもらったナノブロックを完成させる。サグラダ・ファミリア。これは集中できるし、時間が経つのが早く感じられるし、達成感を得られるし、お見舞いの品として最高だ。

明日は胸部CT、心電図、採血、尿検査。手術に向けて着々と準備が進んでいる。
そういえば、せせらぎ音がうるさいチェスト・ドレーン・バッグが静かになった。先生が黄色い部分に水を入れたら、一切ブクブク言わなくなった。最初からこうしてくれればよかったのに。もちろん小心者だから、言わなかったけど。