入院11日目から12日目までの記録

8月9日
朝10時半、外科へ転棟。前と同じ個室レベルC。おならし放題、トイレ行き放題。潰瘍性大腸炎患者が安心できる部屋。あと、病院なのに、個室内なら携帯電話かけ放題。電波が影響する機器がなければ、別に構わないのだそう。入院直後から携帯電話で会社に電話しまくったから、携帯料金が不安。
外科の看護師さんから手術の説明を受ける。以下のものを売店で買ってくるようにとのこと。

  • 手術後に私をストレッチャーからベッドに移すときに使うためのバスタオル1枚
  • 手術時におしっこの管を入れる場合、パンツだと不便なので、T字帯1枚
  • 手術後に当てたガーゼなどがはがれないよう、手術用腹帯2枚
  • 手術が長引いた際に起こりうるエコノミー症候群を予防する弾性ハイソックス

T字帯ってなんだろうと思って調べたら、何のことはない、越中ふんどしだった。まさか私の人生において、ふんどしを買うことになるとは。
そして、手術用腹帯は布に紐がついていて、腹巻みたいに巻くもの。
一番以外だったのは弾性ハイソックス。しっかりふくらはぎのサイズを採寸されて、Mサイズを買ってくるよう指示を受ける。全部病院の売店で購入可能だそう。
手首に名前と生年月日が入ったものを着けられた。違う人に手術しないようにだろう。ちょっとだけCOUNTDOWN JAPANのフェスを思い出す。チケットをリストバンドに交換して、手首にずっと巻いていたあれを。ひとり手術フェスだ。当たり前だが、盛り上がらない。
外科の病棟は前の病棟よりも細かい。自己管理していた薬も再度チェックされ、抗不安薬ソラナックスを没収されてしまった。病院側が管理しなくてはいけない薬なのだそう。これまでは自分で調整して、飲んだり飲まなかったりしていたのに、これからは、逆に朝昼食後、就寝前に必ず飲むことになってしまった。飲んだかどうか、飲んだ後の薬のパッケージもちゃんとチェックされる。飲まずに溜め込んで、一気に飲んでしまう人がいるからだ。
この日、母が13時頃来る。そして、2人してダラダラした後、16時頃から先生による手術の説明を受ける。まず衝撃的事実判明。今回気胸になっていない方の右肺にも、「ブラ」と呼ばれる、薄い風船があるとのこと。しかも大きめのやつが。つまり、右も今後気胸になる可能性が大きいということだ。
今回左右同時に手術をするかは、別の先生と相談して決めるとのことで、この時点ではわからないまま。左右同時に手術をしても、退院までの期間が長くなることはないが、患者が大変だとのこと。
手術では、身体に穴を2つ開け、そこから胸腔鏡を入れて、ブラ(穴があいた破れやすい風船部分)を糸で縛り、さらに既にドレーンが入っている穴から、これまでより太い1cmほどのドレーンを入れ直すのだそう。つまり、身体の両側面から今より太いチューブがささり、それが、それぞれ、別のチェスト・ドレーン・バッグとサーボドレイン2000につながるということ。
トイレに行くときなどは、まず、左右2つのサーボドレイン2000の電源をそれぞれ抜いて、電源コードがからまないようにうまく処理して、機器が乗った台を2つ押しながら、移動しなければならないということ。しかも、痛みも今のように半身だけではなく、全身になる。今のように、鎮痛剤を使わずにいられないかもしれない。
先生から一通りの説明を受け、母と2人で個室に戻る。2人とも落ち込むというより、呆れて笑っている。「なんで私ばっかりこんな大物の病気になるんだろうねー」と私が言うと、母は「kaayaが大物だからだよ」と答えた。なんだそりゃ。


8月10日
手術日前日。
朝、先生が来て、今回は左肺だけの手術にしましょうと言われる。理由としては、右のブラは過去にやぶれた形跡が無いということと、今すぐやぶれる危険が無さそうだからということ。少しホッとする。
右肺に爆弾を抱えてはいるが、今回の手術が楽になるのはやはりうれしい。それはそうと、この「爆弾を抱えている」という表現が気に入っている。よく、小説や漫画で「右足に爆弾を抱えている」とか「心臓に爆弾を抱えている」という表現を目にするが、自分も使える日が来るとは。そう、私は右肺に爆弾を抱えているのだ!でも、その爆弾の名前は間抜けなことに「ブラ」というのだ!まいったか!
看護師さんに左だけ手術することになった話をした際、両肺手術する人も多いのか聞いてみたところ、1年に1回程度と聞いて驚く。そんなに少ないのか。最近あったのは、女子中学生の子の手術だそう。お母さんも4人部屋に寝泊りして、完全介護状態でとても大変だったらしい。改めて、左肺だけになってよかったと思う。
午前10時頃、病院併設の理容店へ1人でシャンプーしてもらいに行く。本当は午後に術前のシャワーを浴びることになっているけど、身体も髪も洗うのは疲れそうなので、贅沢というか横着する。
午前11時頃、麻酔科の先生が部屋に来る。美人で物腰柔らか。喉の状態とか首を曲げるときの痛みとか、歯の強さを確認される。麻酔がかかると、深い眠りに入り、呼吸が浅くなってしまうので、その時に口にくわえさせられる器具があるらしいのだが、歯がグラグラしていると、折れてしまうこともあるからだと言う。でもこの質問、手術前日にする質問だろうか。もしグラグラしていたら、今日1日でどうやって治すというのか。
12時過ぎ、母が来る。実は、午前中に、入院前に予約していた潰瘍性大腸炎の病院へ行ってもらっていた。特定疾患申請の書類を書いてもらうため。
私はどうもこの潰瘍性大腸炎の先生と波長が合わないのだが、先生といろいろ話してきたという。「kaayaさんは今回の入院で自分を見つめ返す良い時間ができた」とか「本当は今の仕事を辞めるべきではなかった」とか「最近のゆとり世代は上昇志向が無い」とか「kaayaさんは私に何も話してくれない」とか「もっと趣味として運動をすべき」などと、言っていたらしい。
腹立つ!あー腹立つ!なんで、人間、上へ上へ向かわなければならないの?こんなに大変なことがたくさんあるのだから、地味だけど普通に生活しているだけでよく頑張っているって言ってくれれば、思って無くてもそう言ってくれれば、私は本当に楽になれるのに。多分、あの先生には私のような人間は理解できないのだと思う。
午後13時頃、術前シャワーを浴びようとシャワールームへ行くと、床も壁もどこもかしこも髪の毛だらけで、どうしてもどうしても入る気になれない。看護師さんに、身体を拭くことで許してもらう。こういう神経質なところも、例の潰瘍性大腸炎の先生に言わせれば、ダメなところなのだろう。
脇から胸腔鏡を入れるので、わき毛チェックが入る。全身脱毛が役立つ。剃る必要無しとのこと。
夕食後から夜9時までに1500mlの経口補水ドリンク(OS-1)を飲むように言われる。細胞の状態が良くなり、手術が進めやすくなるのだそう。OS-1は普通の薬局にも売っており、以前飲んだことがあるので、味には抵抗無し。ポカリスエットの塩分を強くしたようなお味。

経口補水液 OS-1 500ml

経口補水液 OS-1 500ml

下剤もOS-1に15滴入れられる。昔は手術前に浣腸されていたらしいが、今は夜に軽い下剤を飲んで、手術当日の朝に排便を済ませられるようにしているのだそう。潰瘍性大腸炎患者としては、下剤無しでも必ず出るので、下剤は少し怖い。でも、浣腸よりはマシ。